はじめに
少子高齢化が進む日本社会において、子育て支援は重要な課題となっています。政府は2025年に向けて様々な新制度を導入し、子育て世代の働き方の柔軟化や経済的支援の拡充を図ろうとしています。本記事では、2025年に予定されている主要な子育て支援策について、6つの側面から詳しく解説します。
働き方改革と両立支援
2025年4月に施行される改正育児介護休業法により、仕事と育児の両立がより容易になる見込みです。
残業免除と短時間勤務の対象拡大
従来、残業免除と短時間勤務の対象は3歳未満の子どもに限られていましたが、改正法では小学校就学前までに拡大されます。これにより、長時間労働から子育て世代の労働者を守り、仕事と家庭の両立をサポートします。
また、事業主は3歳以上の子を持つ労働者に対して、始業時刻の変更やテレワーク、短時間勤務などの2つ以上の措置を講じることが義務付けられます。子育て中の労働者一人ひとりのニーズに合わせた柔軟な働き方を実現できるでしょう。
子の看護休暇の拡充
子の体調不良時に取れる看護休暇の対象年齢が、従来の小学校3年生までから小学校卒業までに拡大されます。さらに、学校行事への参加や学級閉鎖の際にも取得可能になります。
また、勤続6カ月未満の労働者も、子の看護休暇を取得できるようになるため、事業主は制度の周知と活用推進に努める必要があります。
テレワークの推進
事業主には、3歳未満の子を育てる労働者に対して、テレワークの努力義務が課されます。在宅勤務の導入により、通勤時間の削減や病児保育の回避など、子育てと仕事の両立がスムーズになることが期待されます。
企業は従業員のストレス軽減にもつながるテレワーク制度の構築が求められており、IT環境の整備やセキュリティ対策、労務管理体制の確立などに取り組む必要があります。
経済的支援の拡充
子育て世代の経済的負担を軽減するため、様々な給付制度の創設や拡充が予定されています。
育児休業給付の手取り10割化
現在、育児休業中の給付額は、休業前賃金の67%が支給されていますが、2025年度から手取り額が10割程度に引き上げられる予定です。
これにより、育児休業を取得しやすくなるほか、経済的不安を和らげることができます。政府は仕事と育児の両立を後押しする狙いがあります。
出生後休業支援給付の創設
子の出生直後に両親がそれぞれ14日以上の育児休業を取得した場合、被保険者の休業期間について最大28日間、通常の育児休業給付に上乗せして支給される制度が新設されます。
出産後のケアが重要な時期に、両親で協力してゆとりを持って育児に専念できるよう経済的に支援するものです。
育児時短就業給付の創設
2歳未満の子を養育する雇用保険被保険者が時短勤務をしている場合、時短勤務中に支払われた賃金額の10%が給付される制度が新設されます。
子育て中の労働者が経済的な心配なく、短時間勤務を選択できるようになり、家庭と仕事の両立が一層容易になると期待されています。
住宅支援の拡大
子育て世帯に優しい住環境を整備するため、新築やリフォームに係る支援制度が充実します。
子育てグリーン住宅支援事業
2025年度から、子育て世帯を対象に最大160万円の補助金が支給される「子育てグリーン住宅支援事業」が開始されます。GX志向型住宅(高断熱・省エネ住宅)の新築に加え、既存住宅のリフォームにも補助金が適用されます。
補助金の対象となる要件は、一次エネルギー消費量を35%以上削減できる断熱等級6以上の住宅であることが求められます。また、太陽光発電設備や蓄電池の設置にも追加で補助金が出るため、再生可能エネルギーの活用が期待できます。
フラット35の金利引き下げ
2024年2月から、子どもの人数に応じてフラット35の金利が引き下げられています。第3子以降では、最大1.0%の金利引き下げが受けられます。
子育て世帯の住宅取得を支援し、良好な居住環境の確保を目指す取り組みです。フラット35の活用により、子育て世帯の住宅ローン負担が軽減されることが期待されます。
中古住宅の子育て支援
子育て世帯が中古住宅を購入する場合にも、バリアフリーリフォームなどを行えば支援を受けられる制度が検討されています。
中古住宅のリフォームにより、子育てに適した住環境を整備できるよう支援する方針です。子育て世帯の様々なニーズに対応した制度設計が求められています。
子育て費用の負担軽減
子育て世代の経済的負担を和らげるため、教育費や医療費の無償化・助成が計画されています。
大学等の授業料無償化
2025年度から、子どもが3人以上の多子世帯を対象に、大学や専門学校などの授業料と入学金が無償化される予定です。
多子世帯の教育費負担を大幅に軽減し、貧困の連鎖を防ぐ狙いがあります。対象は国公私立、社会人含む全ての高等教育機関となります。
高校生以下の医療費助成
2022年4月から、高校生以下の外来医療費が無料化されています。
さらに2025年度には、入院時の食事療養費や薬局の自己負担額も無料化される方針です。これにより、子育て世帯の医療費負担がかなり軽減されることが見込まれています。
児童手当の大幅拡充
2024年10月から、児童手当の支給対象が所得制限なしの全世帯に拡大されます。また、第3子以降は月額3万円が新設され、多子世帯への重点支援が行われます。
児童手当は、2026年度に向けてさらに抜本的な拡充が予定されており、子育て世代への所得再分配が強化される見通しです。
働く女性への支援拡大
女性の就業率向上とともに、安心して出産・育児ができる環境づくりが重要視されています。
出産費用の保険適用化
2026年度をめどに、産科医療費の保険適用化が検討されています。これにより、出産にかかる費用の負担が大幅に軽減される見込みです。
併せて2023年4月から、出産育児一時金が従来の42万円から50万円に引き上げられました。妊娠・出産にかかるリスク分散が図られています。
妊婦への支援給付の創設
2025年度から、妊婦手帳の交付時に一時金が支給される「妊婦のための支援給付」が新設される予定です。
妊婦の経済的負担を軽減し、安心して出産・育児に専念できる環境を整備することが目的です。給付額は検討中ですが、産前産後の生活費の一部に充てられる見込みです。
共働き世帯への支援
妻の就業を後押しするため、配偶者控除や配偶者特別控除の見直しが行われ、共働き世帯に手厚い支援が行われる予定です。
また、保育園の待機児童解消に向けた受け入れ児童数の拡大や、早朝・夜間の預かり保育の充実なども計画されています。仕事と育児の両立を支援する取り組みが強化されます。
まとめ
本記事では、2025年に向けた主要な子育て支援策について、働き方改革、経済的支援、住宅支援、教育費・医療費支援、女性就業支援の6つの側面から詳しく解説しました。
改正育児介護休業法により柔軟な働き方が可能になる一方、育児休業給付の手取り10割化や新たな支援給付の創設など、経済的な後押しが強化されます。さらに、グリーン住宅助成金やフラット35の金利引き下げにより、子育て世帯の住環境整備が進むでしょう。
また、大学等の授業料無償化や医療費助成拡大で、教育費と医療費の負担が軽減される見通しです。出産費用の保険適用化と妊婦支援給付の新設により、安心して妊娠・出産ができる環境も整備されつつあります。
このように、2025年に向けて、子育て世代を多方面から支援する施策が次々と実施に移されます。これらの制度を有効活用し、安心して子育てができる社会の実現を目指していく必要があります。
よくある質問
子育て支援策の主な内容は何ですか?
子育て支援策の主な内容は、柔軟な働き方の実現、経済的支援の拡充、住宅支援の拡大、教育費・医療費の負担軽減、そして女性就業支援の拡大などです。改正育児介護休業法による働き方の柔軟化、育児休業給付の手取り10割化や新たな支援給付の創設、グリーン住宅助成金やフラット35の金利引き下げ、大学等の授業料無償化や医療費助成拡大、出産費用の保険適用化と妊婦支援給付の新設などが主な取り組みです。
育児休業給付はどのように変わりますか?
育児休業中の給付額が、現行の休業前賃金の67%から手取り10割程度に引き上げられる予定です。これにより、育児休業を取得しやすくなり、経済的な不安も和らぐことが期待されています。政府は、仕事と育児の両立を後押しすることが狙いとなっています。
子育て世帯に対する住宅支援はどのように拡大されますか?
子育てグリーン住宅支援事業の創設により、子育て世帯を対象に最大160万円の補助金が支給されます。新築のGX志向型住宅だけでなく、既存住宅のリフォームにも補助金が適用されます。また、フラット35の金利も、子どもの人数に応じて最大1.0%引き下げられるようになります。中古住宅の購入時にもバリアフリーリフォームなどの支援制度が検討されています。
医療費の負担はどのように軽減されますか?
2022年4月から高校生以下の外来医療費が無料化されています。さらに2025年度には、入院時の食事療養費や薬局の自己負担額も無料化される予定です。これにより、子育て世帯の医療費負担がかなり軽減されることが見込まれています。また、児童手当の大幅拡充により、子育て世代への所得再分配も強化されます。
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